
0115
葬斂
- Category
- Exhibition
- Year
- 2023
- Venue
- 229GALLERY
この空間は、熊を収容した檻であり、また熊送りの儀式が行われた洞窟を想起させる場所です。極度の飢餓と混乱の中、一頭の熊が魂として旅立つまでの短い物語を描いています。
舞台となるのは、知床・羅臼町。山と海がすぐそばにあり、熊、鹿、キツネ、人々が潮の香りと音に包まれながら暮らす小さな町です。
駆除された熊が入れられた檻に、私は身長165cmでかがんで入ってみました。狭く、横にはフキの群生と小さな沢があり、数秒で海に出られる場所でした。ここは、この熊が山から海へ、海から山へ移動する、いつもの通り道だったと推測されます。檻から出ようと鉄柵を齧った熊の犬歯はボッキリと折れ、地面を掘ろうとした爪はボロボロでした。
会場の奥には、熊が見ていたであろう海の映像を投影しています。羅臼で発見されたトビニタイ時代の洞窟では熊の頭骨を海に向けて並べ、弔う儀礼があり、後にアイヌの「イオマンテ」へと受け継がれました。
その熊が檻に入った夜は満月でした。長い長い満月の夜。熊の目には、過ぎ行く月が映っていたのでしょうか。
展示していた一本の木の写真について。この木はトレイルカメラから切り出した画像です。ルシャ太郎、通称RTと呼ばれた今回のモデルとなった熊が、死の数日前にこの木で爪を研いでいました。ふくよかとは言えない姿でした。木には今も爪痕が残っています。
RTは4年間の間に、飼い犬8頭を襲い食べました。人と野生動物が隣り合う場所では、接触事故が起こりえます。駆除が時に「やむを得ない」と理解しつつも、それで全てが解決するのでしょうか?そしてそれは、土地の人だけが考えればよい問題でしょうか?答えのない問いを、私はRTから受け取りました。
