TAMAKI YOSHIDA

0127

Brave New World

Category
Exhibition
Year
2023
Venue
東條會舘写真研究所

展覧会ステートメント

𠮷田は近年、フィルム現像作業の失敗をヒントに、日常で使用する洗剤や歯磨き粉などの薬品をフィルム現像時に混ぜるというユニークな手法を用いながら、野生の獣たちを被写体として、人と自然・生物の関係を問い続ける作品を展開しています。

今回の展示では、数多くのポートレート写真を生み出してきた東條會舘写真研究所の暗室と、銀塩写真の制作に不可欠な水を調整していた地下室の2つの空間で、儚くも勇ましい獣たちが、その姿を露にし、語りかけてくるでしょう。

展覧会詳細

野生の獣たちを被写体として、人と自然・生物の関係を問い続けてきた𠮷田多麻希。創業から100余年、人のあり姿をポートレートに納めてきた東條會舘。この二者が出会い、写真展「Brave New World」を開催します。
写真の黎明期を支えた東條會舘写真研究所を舞台に、儚くも、勇ましい獣たちが、その姿を露にし、語りかけてきます。

外界と遮断された研究所の暗室から始まる体験は、人が思う理想の自然像を閉じ込めようとした「写真のプロセス」と、「被写体として捉えられた獣たち」とが織りなす共演の世界。
そして続く、嘗て銀塩写真の制作に不可欠な水を調整していた地下室では、反転して獣たちが、理想の画から抜け出し、ありのままの混沌とした姿で、華やかに描き出されます。人が自然を脅かすように、獣たちを映し出すフィルムは、生活排水により侵食されながらも、獣たちの内側に眠る勇ましさ、狡猾さ、そして𠮷田が生き物に向ける愛おしさを、より一層浮き彫にしていきます。

高度な文明を築いたはずの人類が、粗野の自然に目を向ける時、そこには何も持たずとも、種として生き続ける獣たちの姿を見ることができます。
人が自然を破壊し続ける中でも、彼らは力強く、生き続けています。自然を破壊、侵食していく人の営みと、それさえも包含する大きな自然・生物の営みは、これからどのような物語を描くのでしょうか。

東條會舘写真研究所

アーティストステートメント

ここに写る生き物はさまざまな環境に適応しながら、したたかに命を紡ぎ人間の生活を脅かす、日本では「害獣」として扱われる生き物である。 これらの生き物や植物は強い。 人が生活できなくなった原発事故の立入禁止区域が野生生物の楽 園と化している様 に、一個体の命は短くなったとしても、その環境にしっかりと根付き・生き繁栄している。
人は生きやすく繁栄できる理想を追い求め、あらゆる手段やルールを生みだしてゆくが、その行き着く先この地球上で強く生きているのは、十分に高度な化学や技術を発達させた私たち人類では無く、もしかしたらここに写る何も持たない強き生き物なのかもしれない。

ある日、フィルム現像に失敗した私は落胆と共に大きな衝撃を受けた。ネガフィルムに大きくできた現像ムラが、そのネガに写る野生の鹿を侵食する脅威に見えたからだ。 それはまさしく、わたしたちが自然に対して行なっている行為そのものだった。

大きな環境破壊のニュースの影で、実は生活排水の水質汚濁への影響はとても大き い。日々意識せずに排出される化学薬品が自然界に与える影響を想像した私は、野生生物を撮影したネガフィルムを、私が日常使用する洗剤、化粧品、歯磨き粉など を混ぜて現像した。 結果、崩れながらも鮮やかに発色する世界と、強く生きる生き物の姿を見つけた。