TAMAKI YOSHIDA

0113

日目

Category
Exhibition
Year
2024
Venue
Live Art Gallery

—写真家、𠮷田多麻希の思考と表現—
生成AIやバーチャルリアリティが現実世界を侵食し、人々の共通認識、社会を動かす価値観は時事刻々、猛烈なスピードで変化している。昨今のこうした状況にあって、多くの写真家が自身の制作姿勢への迷いや未来への不安を口にする中、全く動じることなく、写真表現の可能性を信じ、論理的な思考と圧倒的な行動力で制作を展開する作家、それが𠮷田多麻希だ。彼女の揺るぎない美意識に基づく制作姿勢は、写真がその誕生から約200年にわたって継承してきた“リアリティ−”へのこだわりと「物事の核心」を徹底的に追求するストイックさによって成立している。
今回の作品は彼女の“生物観”である「人間は地球上の生物のひとつにすぎず、全生物の生命の循環によって機能する地球秩序を壊してはならない」というメッセージを色濃く反映している。本作品の制作にあたり𠮷田が採用したダゲレオタイプは、1839年にフランスで発表された実用的な写真撮影法で、銀メッキを施した銅板を感光材として用いるため、日本では“銀版写真”とも呼ばれてきた古典技法である。ただ、彼女がダゲレオを選んだのは、昨今流行りの懐古趣味などではない。人間社会の利便性のために進む開発により野生動物の生育圏が破壊され、図らずも命を落とした動物たち。その命を丁寧に弔う神聖な儀式として、ふさわしい写真技法がダゲレオタイプだと考えたからだと話してくれた。
撮影も現像も難しいこの技法での表現された動物たちの亡骸は、私たちが普段目にする写真とは一線を画した崇高な「生命の存在」として、永遠の光を纏っているように感じられる。写真表現の大前提は被写体への尊厳であることを、今更ながら教えてくれる本作品。『日目』は、『葬斂』の流れを汲む彼女の代表作として骨太なシリーズとして完結することだろう。

文:太田菜穂子(KLEE INC.)

*ギャラリー公式サイトより抜粋

Artist Statement

本展キュレーターこれは、交通事故に遭い路上に放置された生物の死にフォーカスしたプロジェクトである。血管の様に張り巡らされる「道」。
その発展は私たちにさまざまな恩恵をもたらし、社会、経済、生活あらゆる面での活動を活発化させてきた。そして、その道は、富士山麓にも無数の登山客や観光客を届けている。
華やかに賑わう富士の懐の命は、本来ならその地の土の上で命を終え、他の生物やその土地の一部になるはずだった。
多くの人々の活動と共に、多くの生物の死も生まれる。その闇に目を向けることは、私たちの生き方を知ることでもあると私は考える。

吉田多麻希